大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)1367号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人樋口恒蔵の上告理由第二点について。

立木とその地盤とが同一人の所有に属するときは、立木の所有権は地盤の所有権に包含せられて、立木と地盤とは一箇の土地所有権の目的となるものであるから、立木と地盤との所有権を同時に移転する場合は、土地所有権の移転登記をなせば、これにより地盤ばかりでなく、立木についても所有権の移転を第三者に対抗できるのである(大審院大正九年一月二〇日言渡判決、民録二六輯四頁参照)。しかるに原判決は本件立木と地盤との所有権は昭和四年一二月中被上告人に譲渡され且つ地盤については被上告人名義に同月二三日所有権移転登記がなされたことを確定したのであるから、これにより被上告人は、地盤のみならず立木についても、その所有権の取得を以て第三者に対抗しうるにいたつたことが明らかである。さればその後の昭和五年九月にいたり右立木につき訴外山田定次の名義に保存登記がなされたとしても、該登記はすでに対抗要件を備えたものにつき重ねてなされた登記に外ならず、無効であるといわなければならない。従つて原判決が、「上告人が同訴外人に対する強制競売手続において本件立木を競落したからといつて同人は当時本件立木の所有者でなかつたのであるから、右競落によつて有効にその所有権を取得するに由なく、右競落を原因として本件立木についてなされた上告人名義の所有権移転登記は事実に吻合しない無効のものである」とした判断は結局正当である。論旨は立木と地盤とが常に別個独立の公示方法を要するとする独自の見解に立つものであつて採用できず、なお論旨引用の判例はすべて本件に適切でない。その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例